じょにっき

鉄道会社総合職→外資系ITスタートアップの人。社会人7年目。

晴れているのになぜ「大雨のため列車の運転を見合わせる」のか、いつまで待てばいいのか

旅行に行けていないので、全然書くことがありません。

(1個ネタを残していることは残しているのですが。)

 

ただでさえそんな憂鬱な状況の中、さらに大雨が西日本を襲い、この先もまだ線状降水帯が発生しそうな予感だとか。

鉄道会社にとっても気が重い話です。

もちろん線路が流されるとか設備上の不安もあったりは当然するのですが、

列車が遅れると、止まるとご迷惑をかけてしまうし、数多くの苦情の声が上がってくる。

たまーにのりものニュースさんあたりが書いてくれたりしているネタでもあると思うんですが、なぜ大雨で列車が止まるのか、そしてタイトルの事象が起きる経緯っていうのを書いてみようと思います。

 

f:id:sunbay0816:20200710185943j:plain

ちなみに話変わりますけど、

お客様センターへの苦情ってちゃんと聞いてるんかなみたいなこと思ったりされる方いるかもしれませんけど、むちゃくちゃ社員見てます。

お客様センターに入った苦情やお褒め・感謝は全てデータベースに登録されて、各箇所に割り振られて、その後事実の確認や注意、回答と言ったことがなされます。

対面で怒鳴るとかももちろんその駅とか乗務員の区所の人がデータベースに入力すれば、幅広い箇所に共有されますが、されないこともあるので、実はお客様センターの方が確実なんですよっていう豆知識。

 

1.何をもって大雨というのか

「雨量計の数値が規制値に達したため、運転を見合わせます」みたいな表現を見聞きしたことはありますか?? 

 

各駅とかあるいは駅間とかには雨量計っていう文字通り雨の量を計測する機械が設置されています。柱の上にタンブラーみたいなんが置いてある形状なんですけど。

 

そこに降り注いだ雨の量に応じて、「警備」(雨強いから注意してね)「徐行」(大雨で落石とかあるかもやからすぐ止まれる速度で運転してね)「抑止」(地盤緩んでたり土砂崩れとか災害の危険性高いから運転しないでね)っていう基準を持ってます。

1時間に20mm以上なら警備、25mm以上なら徐行、35mm以上なら抑止みたいな感じですね。

それを指令っていう列車運行を司るところで一元的に把握していて、決められた数値になったらアラートが鳴る設定をしていて、その数値を確認して運行についての指示を下すというわけです。

 

山の中を走る路線が止まりやすいのは、「抑止」(運転を見合わせる)の基準の数値が低いから。

山の中の路線、横に山が迫っていて、線路も土の上ならして引いただけみたいなとこなら、1時間に25mm以上で徐行、35mm以上で運転見合わせっていう感じです。でも都会の路線なら70mmで徐行、80mmで運転見合わせとか全く違う数字が設定されています。周りがビルで高架を走っている路線ならよっぽどの限り止まることはないと思っていいでしょう。雨で土砂崩れや落石も起きないし、地盤が崩れることもないので。

もちろんその区間はそうでも、路線全体で見たときはそうじゃない区間もあると思うので、実際はダイヤ乱れが発生するとは思いますが。

なので30mmの雨を大雨とみなす区間もあれば、そうじゃない区間もあるというわけで、その設定の仕方については「特情」という他ありません。

 

2.どうやったら運転再開されるのか、いつまで待てばいいのか

駅員をしていたとき必ず聞かれる質問でした。

まず速度を落としている「徐行」の場合。

これは徐行の基準の数値が下がれば、そのまま通常の速度で運転できるようになります。

厄介なのは運転を見合わせる「抑止」の基準の雨量を超えてしまったとき。

当然1時間あたりの雨量が「抑止」の基準以下の雨量になることが必要なのですが、それに加えて、1度運転を見合わせてしまえば、必ず線路点検(現地巡回)をしなければなりません。

線路上走れるモーターカーみたいなのも活用しながら、

線路が流されてないか、落石だったり土砂流入がないか、線路陥没ないか、倒木とかないかということを点検します。

この「抑止」となっている区間が短ければ、点検も早く終わるので、比較的スムーズに再開できますが、区間が長いと点検にも長い時間がかかるので、雨が小康状態になってもなかなか再開できないということが起きます。

A駅・B駅・C駅・D駅とあって、A駅~D駅で運転を見合わせてるとします。

(B駅とC駅では折り返し運転ができないからA駅~D駅間で見合わせているイメージ。)

抑止の基準40mm以上を満たしたのはB駅だけでしたとなったら、点検はA駅~C駅間で済みますが、B駅とC駅で基準超えましたってときは余分にC駅~D駅間も点検が必要になるからより時間かかるよっていうことですね。

 

つまり運転再開までの時間は、

①1時間あたりの雨量が「抑止」の基準を下回る(最低1時間以上)

②雨が降り止むなど「抑止」の基準を下回ることが確実になってから点検を行う

③点検の結果、異常がなければ運転再開

ということになりますので、ゲリラ豪雨的な大雨でも1度見合わせてしまえば最低でも2時間程度かかるというイメージを持っていただいていた方がいいかと思います。

 

3. 朝から雨降ってないのになんで止まってるのか

タイトルの回収です。

朝出勤しようとしたら運転を見合わせている。

確かに夜中は大雨やったけど、今は晴れとるやないか。大雨のためなんで運転見合わせるんやみたいなお叱りよく受けました。

さっきまでは1時間あたりの雨量をベースに話してきましたが、もう1つ罠というか、基準があります。「連続」という基準です。

1時間あたりで「警備」「徐行」「抑止」の数値が定められてるほかに、

「連続」っていう12時間とか24時間とかの合計の雨量でも「警備」「徐行」「抑止」の数値が定められています。

1時間あたりであれば40mmで運転見合わせの基準を持っているのとは別に24時間の合計が例えば300mmを超えた場合も運転を見合わせるという基準を持っているということです。

それゆえ1時間の雨量は0mmでも、24時間合計の総雨量が300mmですっていう場合は運転を見合わせることがあるということです。

今は適当に300mmっていう数字をあげましたが、この数字も雨量計が設置されている箇所の状況によって異なります。地盤が緩い箇所は低いし、強固な場所は高いし。

運転を見合わせる基準は1時間あたりでしたら数十mmとかですが、「連続」になると数百mm単位です。よっぽど降り続いたときにかかる基準です。

あたりまえですが、水分を多く含んでると地盤は緩くなりやすいからっていうことですね。

 

遠方から来る列車で、そのエリアは大雨やから見合わせてるっていうケースももちろんあります。ただこういうパターンもありますよって話です。

いつ再開されるのかというのは雨の量にもよるので一概には言えません。ただ雨が降り止んでいるのであれば、「抑止」のラインを下回る時間の予測はつくので、運転再開の時間の案内は一定できるのではないかと思います。(昼過ぎとか●時以降みたいな案内)

この数字の下がり方やと運転再開できるなっていう段になって、線路の点検を始めます。

点検の結果、落石ありました線路陥没ありましたとかはざらにあるので、延びる可能性もあります。

 

晴れているのに徐行して運転しているのも理由としては同じですね。

雨量計データの「連続」の基準値を下回らない限りは「徐行」を解除できないので、晴れていても速度を落として運転しなければならないというわけです。

 

4.大雨でなんで終日運転見合わせの判断を下すのか

前日くらいから強めの雨が降り続けてて、15時くらいにさらにすごい大雨が降った。

その後「終日運転見合わせ」の情報が入ってきた、みたいなことがあったりします。

これも同じ「連続」の値が理由です。

1度連続を超えてしまうと、10時間とかの単位でその数値が徐行以下の基準まで下がらない。夜中まで運転再開できない。だから終日運転見合わせにしてしまうというわけです。

 

もちろん鉄道会社にも至らぬところは多々あると思うのですが

(もっと細かな案内しろとかなぜ間違った案内をするんだとか)、

まずは少しでも仕組みをしってもらって、駅で働く方の案内負担が軽減されることを心から祈っております。